相談実例
財務改善:借入金を減らしたい~A社~
1) 課題
- 月次決算も不定期であり社長のみならず専務の利益に対する意識も薄い。
- 短期借入金の比率が高く、会社の低い利益率を考えると今の返済金額は負担が大きすぎる
- 会社の収益体質を考えると粗利が低いのが最も大きな課題
2) 処方箋
①月次の徹底
毎月末試算表を翌月25日までに必ず出せるようにすること
「大体頭で解っている」と仰る経営者がいらっしゃいますが、あまりに「大体」過ぎる場合がほとんどです。数字は嘘をつかないので、先月が100点満点で何十点だったのかその「成績表=試算表」をなくして企業経営は出来ません。
最初の一年は毎回試算表の見方読み方を役員全員にお教えする事と致しました。
②リスケジュールの実施
現在の返済を一時止めるべく金融機関にリスケジュールのお願い
今の時代リスケジュールは決して難しいものではありません。「金融機関も理解して下さります。勿論新規の借入が出来ませんが、こうして復活している上場企業が何社あるでしょうか?」このように時間をかけ会社を説得。
金融機関には、「経営改善計画書」を提出。
返済金額が企業業績に比してあまりに多額になると返済資金繰りに「エネルギー」をとられすぎ、「経営=営業、人事」といった本来経営者が考えなくてはならない事柄を考える時間がなくなってしまいます。これが資金繰りを巡る最大の問題です。
③粗利率の改善
粗利率20%→30%へ
A社の業種、仕事の内容を考えたときに少なくとも30%は達成できること、
取り組むべき具体的な仕事の選定、具体的作業方法仕事の進め方、作業員間の意思疎通の悪さを主原因とする現場の非効率性等々を改善するため毎月何回かの全体会議を弊事務所も参加の上実施。
3) その後の経過
まず月次の徹底から始め、リスケジュールの実施、粗利率の向上に対する全体会議を通じ、まず徐々に粗利率が向上、コンサルティング開始から5年目の今年は、売上高4億円、粗利率35%超を達成。また、リスケジュールの実施から利益率改善に伴い、「経営改善計画」を前倒し実施。借入残も1億を切り、2年前から「正常貸付先」として金融機関と取引中。
事業承継:後継者に事業を引き継いで貰う~B社~
1) 課題
- 社長保有株式総額1億円は専務個人で負担するには高額である。株式購入にかかる個人借入も出来るだけしたくない。
- 現社長としては、専務が「社長」として完全に「自立」出来たと思えるまでは、会社にとどまりたいと考えている。
2) 処方箋
「事業承継」では、2つの重要な承継を実行することになる。
一つは「地位」の承継であり、二つ目が「株式」の承継である。
一つ目の地位の承継は、現社長から現専務への権限の移譲という経営実務上の困難さを別にすれば非常に簡単で、取締役会、株主総会を経て専務の社長就任と社長の退任(会長に就任)を決議、承認すれば良いだけの話である。問題は「株式」の承継である。B社のように経営者は謙遜を含め「大して儲かっていない」とよく仰るが社歴の長い会社は、今までの利益金額の総累計額が貸借対照表上の純資産の部に積み上がっているため、想像に比して株価が高額となりがちである。
①株価の引き下げ
会社の決算書を精査すると現社長に対する貸付金3,000万円、長期滞留債権1,000万円あることが解った。そこで、現社長には、非常勤取締役の会長に退いて貰い6,000万円の退職金を支給。長期滞留債権1,000万円を税務要件を満たす形で貸倒損失処理。
②決算書対策
「許認可の関係上、赤字決算を避けたい」との希望。
昨今の人手不足を背景に近年粗利が改善しつつあったことも幸いし、①の退職金並びに長期滞留債権を2年間で黒字を確保しながら費用計上。
3) その後の経過
②の計画的利益償却により2年後に株価は額面価格相当にまで下がり会長から社長へ1,000万円相当での株式譲渡実現。6,000万円の退職金の支給も2年間の分割支払、並びに前社長に対する貸付金との相殺で支給したため、今回の事業承継で会社は金融機関からの借入をせずに実行できた。
新社長も株式購入資金1,000万は会社からの借入で資金調達。増額した役員報酬で3年間で資金返済。当初の想定より遙かに少ない「現金支出」となり、現在も安定的に営業を続けている。